ううとうとうシリーズ

コンセプト

人は誰でも色々な感情を持っている。それをそのまま人に見せる、ぶつけるのではなく、隠すことが美しいと私は思う。しかし隠していても見えてしまうものであり、全てを隠す必要もないと思う。隠すことで、エロスや緊張感、気配などが増すように思う。隠すことは本当の強さだと思う。

このシリーズは描く途中と仕上がりが全く異なる。途中経過は、心の生の感情や感覚など。それを乳白色や白で覆っていく。この覆っていく過程は、自分にとってメディテーションのようなものである。自分が全てを曝け出すことよりも隠すことやオブラートに包むことを本当の強さだと思うのは、日本文化の根底にある禅思想の影響もあるのではないかと自分なりに分析している。

ううとうとうの意味
『ううとうとう』とは先祖にお祈りをする様を指す沖縄の方言

どのようにこのシリーズが生まれたか?
二十歳くらいの頃、沖縄出身の親友の実家を訪ねた。親友共々東京に戻る時に、親友のおばあちゃんが「ううとうとうしましょうね」と安全祈願を親友のご先祖様に安全祈願してくれた。私が生まれ育った東京は人との関係が濃密ではない。そして、青森に住んでいた今は亡き父方の祖母(母方の祖母は幼い頃に亡くなったのでよく覚えていない)も、人にはあまり温かな人ではなかった。だからなのか、「家族」と「それ以外の人」には大きなボーダーを設けるべきという感覚の中で育った。そんな感覚を持っていたので、家族ではない私のこともご先祖様に安全祈願してくれたことに大きな衝撃を受け、自分が知らないとても温かい世界観があることを知った。

そのことを描きたくて描いたのが2008年のGEIAI(村上隆主催のアートイベント)に出展したううとうとう。そしてそれがううとうとうシリーズの1枚目になる。