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後藤了子は、個人的な経験をもとに普遍的なテーマを探求し、作品制作に取り組んでいる。物事には多面的な側面があるという考えに基づき、例えば悲しいテーマにも暖かみを添えるなど、異なる視点を取り入れ、感情や感覚など、見えている世界プラスαを表現しようとしている。
18歳の時にジャクソン・ポロックの作品に出会い、抽象表現主義に感銘を受けた。それがきっかけでニューヨークスクールに憧れを持ち、後にニューヨークへ移住してその世界観に近づこうと試みた。しかし、10年近い海外生活で自分が日本人であることを強く認識するようになり、2020年に禅庭について学んだ際、禅の表現がより本質的で自分に合っているのではないかと感じるようになった。
彼女の制作スタイルは、特定の素材にとらわれることなく、テーマに最も合った素材や技法を選び抜くアプローチを取っている。素材そのものの特性を活かし、作品ごとに異なる手法を用いることで、より強く、シンプルにテーマを伝えることを目指している。また、禅の探求を続けることで、作品に無駄を削ぎ落とした純粋な表現を目指している。
2023年、父親の死をきっかけに、実家の菩提寺が禅寺であったことを知る。それから、禅をより身近なものと捉えられるようになり、自分の作品の根底にあるものを明確にするためにも、禅について考えるようになった。
抽象表現は、鑑賞者が自らの感性で自由に意味を見出し、自己を投影できる余地を残す。そうした性質が、鑑賞者に自由に受け止めてもらいたいと考える彼女の意図と合致し、彼女が抽象表現を選ぶ大きな理由の一つとなっている。